Einmal 対談 第10弾 チェロ 藤原健太「本番の魔法を起こしたい」

Einmal対談 第10弾

第9弾は、伊藤健汰さんです。まだの方はこちらからご覧頂けます。

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本サイトをご覧いただき、まことにありがとうございます。

Einmal Project(以下本プロジェクト)を立ち上げ、代表を務めさせていただいております、稲垣 悠一郎(いながき ゆういちろう)と申します。

この対談の趣旨は、奏者やメンバーのみんなとの対談を通して、Einmal がどのような団体であり、何を目的に活動しているのか、ということを少しでも多くの人に知っていただきたいと思いから対談させて頂いております。

第1弾は、指揮者・佐久間 一平(さくま いっぺい)氏

第2弾は、渡邉 彩恵香(わたなべ さえか)さん

第3弾は、染村 成実(そめむら なるみ)さん

第4弾は、杉山 祐一(すぎやま ゆういち)さん

第5弾は、三浦 稔史(みうら としふみ)さん

第6弾は、小原 和花子(こはら わかこ)さん

第7弾は、永島 聡美(ながしま さとみ)さん

第8弾は、井上 裕美子(いのうえ ゆみこ)さん、竹内 春揮さん(たけうち はるき)さん

第9弾は、伊藤 健汰(いとう けんた)さん

と対談させて頂きました。

本日は、チェロ奏者の藤原 健太(ふじわら けんた)さんとお話しさせていただきました。

稲垣
それでは、よろしくお願いします。

藤原
はい、お願いします!

稲垣
藤原君とは、去年のめぐろパーシモンホールでのピアノクインテットでの演奏が最初だったね^^

藤原
そうですね、そのあと、佐久間さんのチャイ5にも参加させていただきました。

稲垣
今回は弦楽アンサンブルチェロトップを務めてくれますが、トップとして⼀番⼤事だと思うこと/ここはこだわりたいということを教えてください!

藤原
ドヴォルザークの弦楽セレナーデは全体を通して幸せに満ち溢れていてホントに素敵な曲だと思います(小並感)。彼のメロディーメーカーとしての本領が発揮されているメロディの柔らかな雰囲気ももちろんですが、各楽章で顔を出す闊達なリズムも彼らしさの一つだと思います。チェコの人々が酒場でビール片手に足踏みしながら踊っているような、聴いてくださる方も動き出したくなるような、そういった雰囲気もつくれたらと思います。

稲垣
ありがとう。今回は、シューマンのピアノカルテットやドビュッシーのピアノトリオも弾いて頂くと思います。弦楽アンサンブルと室内楽の楽しみ⽅の違いを教えてください

藤原
小編成の室内楽はまさにそれぞれの奏者の掛け合い・コミュニケーションが見える場だと思います。シューマンもドビュッシーも、それぞれ互いのメロディを引き継いで歌ったり、ほかの奏者が弾いている裏でハモったり支えたりする部分では、相手に寄り添ったりしながら演奏していきます。弦楽四重奏は「4人の賢者の対話」とも言いますし。

稲垣
そうだね、より奏者の呼吸やコミュニケーションを感じることができるのが、室内楽かな^^ 他方、弦楽アンサンブルも、今回は、指揮なしでやるので、迫力と阿吽の呼吸をお客様に感じてほしいなあと思っています。

藤原
アンサンブルも室内楽の延長線上にあるように思っていますが、やはり一回り多い人数でやる分だけ、それぞれのセクションのまとまりや一体感というのがより見えるのかなと思います。弦楽合奏などだと指揮者がアンサンブルを繋ぐ・まとめる役割と、アンサンブル全体の解釈を一つにまとめる役割を担うことも多いですが、今回のドヴォルザークは指揮者なしということで、その役割を奏者それぞれが互いに担う必要があり大変でもあります。ただ逆に言えば、それぞれの奏者の解釈をよりぶつけ合いながら、より周囲との結びつきを感じながら音楽を作っていく面で、本番では非常にスリリングかつ面白いものが生まれるような気がしています。

稲垣
これまた奏者のみんなに聞いているんだけども、クラシック音楽の良さはどこにあると思う??

藤原
クラシック音楽の面白さは、その解釈の多様性だとおもいます。有名な作曲家たちが生きていた時代には自作自演として、自身の手で演奏されることが一般的だったとはいえ、現代ではクラシック音楽は、作品のみが今まで生き残って、最終的に演奏家が演奏することで聴く側は楽しめるという点は、芸術の中でもクラシック音楽が持つ特徴の一つだと思っています。自分はクラシック音楽の世界に聴く側から入った人間で、クラシック音楽を聴くのが今でも非常に好きなので、演奏をするようになってからも基本的には聴衆としてのスタンスで、作曲家の意見や楽譜にとらわれ過ぎない、演奏者の個性というのを大事にしたいと思っているところがあります。

稲垣
演奏者の個性を感じることが、一番聞いていて楽しいところだと僕も思う。同じ曲でもこんなに違うんだ!っていうのを聴衆として見つけるとその人のファンになってしまいますね(笑)

藤原
楽譜はあるけれど、そのメロディをどう読むのか、どう歌うのかは人によってそれぞれ。当然様式や時代性、作曲家ごとのキャラクターなどで決まる部分はあるけれど、それを生かして演奏するのも、そんなこと関係ないじゃん!と思って演奏するのも自由だと思います。大事なのは聞いてくださる方に楽しんでいただけるかどうかというところだと思います。

稲垣
ちょっと質問内容がかぶるかもしれないですが、⾳楽の⼀回性を⼤事にするという当団のポリシーがありますが、藤原君が⾳楽をするにあたって、⼤事にしていることはなんですか?

藤原
ことばを入口に色々な専門を勉強する大学(東京外国語大学)に通っていたこともあって、音楽とことばを結びつけてよく考えるのですが、音楽は演劇と似ている部分があるのかな、と常日頃思います(演劇の経験はほぼないのですが笑)。それぞれが自分の台詞を覚えて、雰囲気をつかむ。読み合わせや立ち稽古で共演者がどのように台詞を言うのかを確認してコミュニケーションをとりながら、自分も変えていって一つになっていく。でも本番は、準備をもとにしながらもその場の流れを重視して臨機応変に演じていく。準備通りにいかないというのはマイナスに聞こえるかもしれないですけど、むしろしっかりと練習を積んでいるからこそ、流れだったり雰囲気だったり、それぞれが敏感に感じ取りながらより良い本番となり、いわば「本番の魔法」というのが起きるのが舞台上だと思います。

稲垣
「本番の魔法」!これか!僕が求めていた言葉は←

藤原
音楽も同じ部分が多いと思いますし、本番だからこその演奏、というのは、まさに「音楽の一回性」なのかな、と思います。ただ音楽では技術がより必要とされるので、アマチュアでは限界があるのかもしれませんが…。でもEinmalの皆さんはレベルの高い奏者の方々ばかりなので、きっとこういった「本番の魔法」みたいなものがそれぞれの団体さんの演奏にも溢れていくのかな、と、勝手ながら期待しています。もちろん自分も頑張ります。笑

稲垣
いいものをきっと、作りましょう! ところで、チェロの良さはどこにあると思いますか?

藤原
チェロの魅力は「歌う楽器」という事かなぁと。音域が人の声に凄く近い楽器だとよく言われるのがチェロ。楽器が一番響く音域で気持ちよくメロディを弾いてるときは奏者も心地よくなってる気がします。ヴァイオリンの様に派手な事は出来ないですけど、しっとりとメロディを聞かせるのはチェロに任せてくれ、って感じです。笑
アンサンブルや室内楽などでは、コントラバスと共に一番低い音域を担って、逆に全体を支える役目をするのですが、そういった幅の広さも弾く側としては魅力ですね。

稲垣
こう言ってくれるチェリストがいると、ヴァイオリンも気持ちよく奏でられます()←  藤原君は、クラシック以外の音楽は聴く?? 今までの奏者の人は、結構クラシック以外の音楽も好きな人が多かったですね。

藤原
専らクラシック音楽ばかり聴きますが、基本的にはオールジャンル、良いなぁと思った曲や、その時の気分で何でも聞きます。父親の影響で昭和のフォークソングやポップスなども良く聞きます。さだまさし、ユーミンあたり。ジャズも時々。上原ひろみみたいなロック寄りの感じも好きですし、ビル・エヴァンスみたいなしっとり系も好きです。

稲垣
藤原君は聴衆として、コンサートに行ったりする?

藤原
日本の現役の演奏家の方だったら、ピアノの萩原麻未さん、ヴァイオリンの庄司紗矢香さん辺りは東京公演があるとすぐ行っちゃいますかね笑萩原さんの演奏は、多彩な音色も勿論魅力ですが、何かが憑依しているかのように演奏される姿など視覚的にもとても魅力的で、ライブで見たいと思える数少ない演奏家のおひとりです。庄司さんはとにかくその音色と、曲全体をしっかりと把握した上で濃厚な解釈がとても好みで、どんな曲でも「庄司さんの演奏ならぜひ聞いてみたい!」と思ってしまいます。お二人とも「強烈で魅力的な個性を持たれた演奏家」という点は共通しているのかもしれませんね…

稲垣
確かに、「聴きに行きたい!」と思えるような演奏家の方は個性が強いですね^^ この団体も、個性、団体としての独自性を出せていけたらと思っています。最後に、好きなものいっぱい教えてください(笑)

藤原
ビール、日本酒、ウイスキー、カフェオレ、美味しいもの(肉魚野菜なんなりと笑)、郡上八幡、夕涼み、田舎、坂道グループ、芸術鑑賞、モネ、ラファエロ、セザンヌ、ホラー映画、YouTube、ゲーム実況、ゴルフ…

稲垣
Youtubeってところが今の世代な気がしますね(笑)今日はありがとうございました!

藤原
ありがとうございました!


〜番外編〜

稲垣
現在、⾳楽活動以外(お仕事や勉強)はどんなことをされていますか?

藤原
今は東京藝術大学大学院で、西洋美術史の研究をしています。専門は15世紀フランドル地方(現在のベルギー)です。音楽は中学ごろからはまったのですが、美術は小学校に入る前から見るのも好きで、展覧会にはそのころから月1回、今では月2,3回のペースで通ってます。この時代の魅力は恐ろしいほど緻密で美しい表現ですかね。ヨーロッパ旅行をした際に実物を見て虜になったのですが、毛髪や衣服のテクスチャの細部まで繊細に丁寧に描かれているのには本当に驚嘆しました。はっきりとした鮮やかな色使いも好きです。

絵画と音楽は、やはり別ジャンルの芸術だな、と思う点は多いですが、影響関係や二つのジャンルにまたがるような芸術家を思うと決して遠い世界ではないと思います。演奏する上でも、曲の雰囲気などから「あの絵に近いな…」と特定の作品を連想するようなこともあり、美術作品から演奏する上でのヒントを得ることも時々あります。

藤原 健太 / Kenta Fujiwara

藤原 健太 / Kenta Fujiwara
1994年生まれ、鳥取県出身。学生時代には、東京外国語大学管弦楽団に在籍、首席チェロ奏者も務める。現在、高麗正史氏に師事。東京藝術大学大学院美術研究科に所属。

出演するコンサート:名曲喫茶ミニヨン(2018年11月17日)杉並公会堂小ホール(2018年12月22日)

Einmal 対談 第10弾 チェロ 藤原健太「本番の魔法を起こしたい」

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